《視線》

寒気を感じた
しかしさっき一瞬感じた絡み付くようなものは直ぐ消える
それはきっと錯覚などではないのだと柳生は思う
ここ数日よく感じる視線
貫くような痛い視線
確かめるでもない、その送り主はわかっている
夕暮れの生徒がもうはけた学校
柳生はゆっくりと肯定の真ん中の一番視界が開けている場所へ進み
そして歩みを止める

振り返る

見る場所は確かめるでもない、二階の一番南の教室
ひとつだけ開いた窓
白いカーテンがそこから零れ緩い風にはためく
そこに見えるのは銀色の強い眼をした男
また感じる
痛い視線、熱い視線
しかしそれは不快でもなんでもなく
ただ、心地良い
ゆらと彼は立ち上がり窓の向こうに消える
柳生は踵を返し、校門を目指す

また感じる

はやくと柳生は思う
はやくはやく、この領域に足を踏み入れるつもりなら
はやく
彼の視線に自分が熔けてしまう前に
はやく・・・と

暮れ行く夕日と彼の視線が熱くて痛い