オメガバースパロをテニスでやるとしたら。
跡部(α)×千石(Ω)の場合。






インスタント・ラブ








「ちゃんと、わかってるよ」

べッドに寝そべりながら千石は妖艶に笑った。

「キミのおうちが厳しいことも、劣等の血を入れたくないことも」

千石はそういうと自身の首のあたりに指を這わせた。
白い首筋。そこにはかなり前につけられたと思しき噛み跡が残っている。
はっきり、くっきりと。

「将来まで欲しいなんて、俺は言う気もないし。キミはαの可愛い女の子と結婚すればいいよ」

男の子でも、いいけどさ。その場合は俺よりイケメンにして。

「でもさ、責任は取ってくれるでしょ?」

いつかの、合宿の時だった。
αの揃った合宿所で、αの一人が選抜を辞退したことで繰り上げ参加となった少年。
知識はあった、それでもまだうまく制御しきれなかった。
彼の色香に惑わされたことで理性を失ったのは、生物的な衝動とはいえ、それでも一生の不覚だった。
別に自分自身に差別意識があるのかと言われればそれは否だ。
しかし、自分の家は恐らくそれを許さない。
特権階級のそのさらに上。経済のかなめに据えられている、そんな財閥の一つ。
代々α以外の血筋は入れたことのない家だ。
例外はない。今までもこれからも。

「責任ねえ、てめえが言う責任ってなんだ」
「だってキミと番になっちゃったんだよ?とる責任なんて一つでしょ」

他の人とレンアイもできないんだからさ、その分キミが遊んでくれればいいよ。

「面倒くさいことは言わないよ、今までどおりでいいから、さ。別に誰にも言わないし」
「ああ、わかってる」
「流石跡部くん」

好きだよ、千石はそう笑った。
跡部はその言葉に返さなかった。
言ったら、言ってしまったらこの世界は終わってしまう。
終わらせてしまえばいいのかもしれない。それでもそうできるほど簡単な話でもないことを跡部は知っている。
跡部は手を伸ばすとオレンジの髪をくしゃりと撫でる。
そして口角を僅かに持ち上げた。


「そりゃ光栄だ」