valentainsday 08 feb



2月7日




己の城の一室で政宗は笑みを殺しきれずにいた。
理由は一つ、手の中にある書状である。
いつも手紙などをおくってくることのない送り主からそれが届いたのがひと月前。
そこから暇暇に手紙を交換し、これが三通目に送られてきたものである。
それは己となかなか気の合う、長曾我部元親の思い人というべき、毛利元就からの書状だった。

『ばれんたいんでーとはなんだ』

一通目、彼らしいといえばいいか、流れるような美しい筆致で描かれたそつのない時候の挨拶の後、要約すればそのような主旨のことが記されていた。
思わず、声をあげて笑ってしまい、傍にいた右目に怪訝そうな視線を投げかけられた、それほどに意外性をついた内容であった。
南蛮かぶれの男にバレンタインも知らないかと馬鹿にされ、手紙を送ってきたのだろうそう判断し、懇切丁寧に教えてやった。
さすれば次に来た書状はこうだ。

『すると、想い人に贈り物をする日ということでよいのだな』

それにも思わずふいてしまった。
あの笑み一つ浮かべぬ男が、そう思うとどうしても笑いが止まらない。
故に、今日は呆れ顔の右目から届いた書状を受け取るとまっすぐに、人のいない己の室へと戻ってきたのだった。

室の真ん中にこしをすえると、書状をぱらりと開き、読み始める。
そこ居る筆致は相変わらず流麗で繊細である。
時候の挨拶が続いている、厳島に雪が降ったとか、それがどれだけ荘厳だったか。
奥州を襲っている大雪を心配する言葉も書いてあった。
あの男がこの部分にどれだけ力を入れているかは知っている、しかしそこを全て読み飛ばし、最後に向かった。
延々と続いた挨拶に比べ、本題は簡潔だった。

『懇切丁寧な対応痛みいる、「かかお」とやらは手に入れるのが難儀なようであるし、我らが作れども本場のものには負けるであろう、なので、諦めて薔薇でも送ろうと思う』


『この手紙を書き終わった後、長曾我部にでも薔薇の手配を依頼する書状を認めるつもりだ、貴公がよいばれんたいんでーを迎えられることを祈っている』


「・・・What?」

長曾我部に薔薇の手配をする、だと?

政宗は思わず書状を畳の上に広げ、何度も文字列を指でなぞり辿る。
そこには確かに長曾我部、とある。
長曾我部に贈る、ではなく、長曾我部に依頼する、と確かに書いてある。
書き間違えだろうか、そう一瞬考えるが、間違えたものを元就が送るとは性格上考えにくい。
さすれば、長曾我部に贈るということを隠したかったのだろうか、しかし元就はそんなことをするくらいなら、もともと他人の名前を書状にしるしはしないだろう。
すれば、この手紙の内容はまぎれもない真実で・・・。

「・・・まさかな」

本場、そこをゆっくりと指でなぞり、自嘲した。
そしてくしゃりと書状を閉じながら政宗は一つの、消し難い、一つの可能性を。



(まさかあの似非宗教に本気ではまったとか、そんなあほな話があるものか!)








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伊達政宗+サンデー毛利(戦国BASARA)

ザビーにバレンタインの贈り物をする、サンデー毛利。
元親が伊達の居城に押し入る5秒前。笑





2月13日―1




「なにつくってるっちゃか」

リビングには甘ったるい匂いが充満していた。
重いようで、軽い、甘い匂いが。
軋識は甘いものが嫌いなわけではなかったがこれだけあれば流石に閉口する。
部屋の主の断りもなく、勝手にベランダに続く硝子戸をあける。
途端吹き込む冬の風に、そこで初めて双識は顔をあげ、にこりと微笑んだ。

「やあ、アス、ほら明日はバレンタインデーだろう?だからチョコレートだよ」
「日本では女が男にあげる日だったと記憶してるっちゃ」
「うん?でも本来は男が女にあげる日だろ」
「・・・まあ」
「じゃあいいじゃないか」

自信満々に微笑むと、双識はボールを持って、リビングのダイニングテーブルにやってきて、チョコを丸めだした。
どうやらトリュフを作るらしい。
長い指で小さな球を作るのに難儀している様は微笑ましく、軋識は苦笑すると傍に行き手を貸す。
ココアパウダーをかけて机の上の皿の上に並べればそれはそれでそれらしいものが出来上がっていた。
軋識の方が器用に丸めるのを見て、双識は時々不満そうな顔をしている。

「アスの方がうまく作っちゃ意味ないじゃないか」
「いいだろ?どうせ舞織にあげるんじゃないっちゃか?俺とレンからってことにしても罰は当たらないっちゃよ」
「違うよ!この量全部を舞織ちゃんにあげるわけないだろう?人識君にも、トキにもあげるんだ」


「勿論、アスにも」


驚いて反射的に双識の方を見れば彼はにこりと微笑んでいる。
そして手元に視線を落とし、友チョコとか言うんだろうそういうの、あれ家族だから友、じゃ駄目かな?と双識はふふふと笑った。

軋識はため息をつき、呆れた、そのような反応を作る。
しかし内心、浮かぶ笑みを押しとどめられない。
残酷なやつだとは思う。
それでも、平等だとしても、ちゃんとこっちを見てくれるその人を。

好いて、やまないのだどうしようもなく。



「ちゃんとラッピングしたのもあげるけど、どうせならアス、味見をしてみてくれないか?」
「・・・しょうがないっちゃね」
「ビター味なんだ、我ながらうまくいったと思うんだけどね、ほら舞織ちゃんも甘党だからねきっと甘いチョコをくれるだろうと思って」
「・・・舞織がくれるような気はしないっちゃが、まあいい」
「そんなことはないよ大好きな兄様くれない妹がいるもんか!で、どうだい?アス」
「・・・・・・・・・・・・」
「ん?アス―アス―?」
「・・・・・・ビターの板チョコ使って作ったっちゃか?」
「ん?ミルクだよ?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ん?もしかして」
「そのもしかしてだっちゃ!!!焦してんじゃねえよ自殺志願!!!!!!!!」







+++++++++++
零崎軋識+零崎双識

お兄ちゃんにふりふりのエプロンを着せるか迷ってやめました。
話の趣旨が変わりそうだったので。笑








2月13日―2




「それは嫌がらせなのか、精市」

机の上にあふれんばかりになっているチロルチョコの山を見、柳は閉口した。
色とりどりのその山は何軒の店からこれを集めてきたんだというほどに種類と量が膨大である。
近所のコンビニでも大体一二種類ほどしか置いてなかったように思う。
さすればこれを集めるためにこの男はどれだけの店を回ったというのだろうか。

「嫌がらせ?柳、こんな無駄骨を折ってまで集めてくる人がこの世界にまたといるわけないだろ、愛だ、愛」

やはり、骨を折ったらしい。
幸村は楽しそうに笑うとその机の中から彼は教科書やらを全て引きずりだし、床に落とした。
バサバサと落ちる教科書やノート。
その端がおれるのも気にせず、全部を落とすと、その机の中に彼はチョコを詰めだす。
途中まではちゃんと重ねて、塔を作り、ちゃんと机の中に納めていたが、全部が適当に入れても入ると察すると男は適当に突っ込みだした。
ときどきぱらぱらとチロルチョコが床に落ちた。

大方詰め終わると、幸村は立ち上がり、ズボンについたほこりを払う。
そして満足そうに笑った。

「やはり嫌がらせだ」
「なんとでもいえ」
「女子たちが困るだろう、あれでもあいつ、もてるんだぞ」
「知っている、だから下駄箱にはしなかった、女子が下駄箱を開けたときチロルの洪水にあったら可哀相だろう?」

夕日に床に落ちたいくつかのチロルチョコが影を描く。
それはさながらコートの中のボールのようだった。

「弦一郎の方がかわいそうだ」
「そういうなら、いいぞ、これは俺がやったことにしてやる」

顔をあげ幸村の顔を見ればまっすぐな視線とかち合う。
それは全てを見透かした視線で。

ただただ。

「幾らだ、精市」
「そう来ると思った」

差し出した手に、渡されたレシート。


「俺達は運命共同体だ、柳」





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立海三強

訳が分からない!!
私だけが楽しくてすいません







2月14日




「ようようようおにーさん、セイントバレンタイーン!ぎゃはは!僕から愛の籠ったプレゼーンツ!」

反射的に扉を閉めた。
僕はじっと頭を扉に付け考える。
うん、ここは僕の家だ、誰のでもなく僕の家だった。
そこにあの殺し屋がいるわけがない、扉の取っ手と鍵が壊れているが間違えなく殺し屋がいる筈がない、よし。
もう一度意を決して扉をあける。
開けた先にはもちろん誰もいない・・・ということはなかった。

「古典的な反応を有難うよおにーさん」
「どう致しまして」

諦めて部屋の中に入る。
そして後ろ手に扉を閉めた。

「で何かようかな、出夢くん」
「あん?だからセイントバレンタインデー」
「いやいやいやうん、そこはわかっているんだけどね、ほらさ、君一応男だろ」
「体は女頭脳は男―ってか?ぎゃはは!ギャグにもなってねーっつの!」
「別にギャグにもしてないけどね」

ため息をつき、彼に座るように促す。
そしていつもの様に水道水をコップに注いで、彼の前に置いた。
水道水、と首をかしげる様は確かに女の子のようで可愛いとは思うが、中身が中身だ。

「いや別に俺だってさ、どうせだったら零っちに殺し合いのプレゼントしてやりてえとこなんだけどさ、ほらあいつ彼女いるじゃん」
「・・・ああ、件の」
「そーそー、だったら今日は譲ってあげねえと駄目かなって思うわけよ、僕優しいからさ!」
「ちなみに僕にも彼女、居るんだけどね」
「それにだ」

無視だった。

「今日は女の子が好きな男の人にプレゼントをする日だろ」
「うん」
「だからよ、今日は理澄の代わりってことで」

「おにーさん、大好き」

細い腕が首に絡まる。
同時に勢いで床に押し倒された。
コップが倒れ、床をはっていく。

彼の気持ちを考えるとこれ以上戯言を唱える気持ちさえ失せた。

ぎゅうと力が込められた腕はまるで少女のようで。
その腕で幾千の人を殺してきた彼だったけれど。
唯一の存在であった妹を失った悲しみは絶大で。
それに今まで一人で耐えてきたことを思えば、ただ。

「理澄ちゃん」

髪を優しく梳いてやる。

「有難う僕も好きだよ」


出夢くん。


「頑張ったね」



微かに耳もと。
彼が笑った気が、した。



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いーちゃん+匂宮出夢

なぜかこの二人。
この兄弟大好きなんです!